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第11回平和構築フォーラム・セミナー議事録

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第11回平和構築フォーラム・セミナー(UNHCRと共催)
「東ティモールの平和構築に向けて〜日本は如何に取り組むべきか〜」
2007年6月12日(月)
於:UNハウス(エリザベス・ローズ・ホール)

【報告者・パネリスト】
山田満 (東洋英和女学院大学教授)
旭英昭 (東京大学大学院教授/前東ティモール大使)
小澤俊朗 (内閣府国際平和協力本部事務局長)
長谷川祐弘 (法政大学教授/前東ティモール国連事務総長特別代表)
阿部智 (外務省国際協力局国別開発協力第一課課長補佐)
佐々木隆宏 (JICAアジア第一部次長)
山本理夏 (ピース ウィンズ・ジャパン海外事業部チーフ)
脇阪紀行 (朝日新聞社論説委員)
全体司会:岸守一 (UNHCR駐日副代表/平和構築フォーラム発起人)
モデレーター:花田貴裕 (外務省総合外交政策局国際平和協力室課長補佐)

【議論のポイント】
●先般の大統領選挙では、日本の選挙監視団は「善意の傍観者」として活動に取り組んだ。東ティモールの平和構築に向け、日本の継続的な関与について、今後も的確なメッセージを発信することが大切である。
●東ティモールは今、政治の転換期を迎えている。世界の最貧国でありながら、財政資金が豊かな国でもある。政治指導者の権力闘争が暴力につながりかねない現状で、民主的なプロセスや法の支配をどう定着させるかが今後の課題となっている。
●職がない若い世代や元兵士の不満をどうおさめていくかも大きな課題である。
●治安部門改革や石油基金を活用したインフラ整備を進めることで、雇用創出を図ることが重要であり、日本の円借款も検討すべきである。治安部門改革の成功のためにはまず政治を立て直し、司法制度を完備することが必要である。
●平和構築の出口として開発支援が重要である。東南アジア諸国との三角協力も有効な観点であり、日本はイニシアティブをとることができるだろう。
●オールジャパン体制の中でNGOのアクターとしての重要性が高まっており、より市民の立場に立った支援や連携の仕方を模索していくべき。
●民主主義の定着に向けて、現地メディアの育成も支援の大きな柱である。さらに、支援側のアテンション・デフィシット(関心の喪失)が生じた際、その後にどうつなげていくか、ギャップを埋めるためにジャーナリズムが果たす役割も大きい。
●平和構築は息の長い取り組みである。現地のオーナーシップを高めつつ、日本が支援を継続してくことが最も重要であり、そのためにも現地の人材育成が必要である。


第1部 大統領選挙監視を終えての報告

1.山田満・東洋英和女学院大学教授(第1回投票時に参加)

(1)東ティモール国民は、99年の直接住民投票以来選挙を重ね、選挙が自らの生活と将来に関わってくることを自覚してきた。独立後の政治や社会には、グスマン大統領と与党フレテリンのアルカティリの対立が色濃く反映されてきた。次の議会選挙では、グスマンが立党したCNRTとフレテリンとの獲得議席数が注目される。先の大統領選では、ラモス・ホルタ(無所属)とル・オロ党首(フレテリン)が両者の代理戦争を展開した。
(2)新党CNRTが、かつてのレジスタンス統合組織のイニシャルを継承したのは、東ティモールの独立を支えたのはフレテリンであると訴えるアルカティリに対抗する意識があったからだ。レジスタンスを展開したのは誰か、という国民への問いかけである。
(3)レジスタンスの主体は誰であったかという点においては、若い世代、市民社会組織も自負している。大統領選挙をみると、ラザマ民主党党首の台頭が明らかであり、今回の主役の一翼を担ったことがわかる。大統領選には75年世代の指導層の内部対立だけではなく、75年世代に対する若い世代の挑戦も含まれていていた。
(4)議会選挙では、独立闘争に参加した人物が各政党のリーダーシップをとっている。次世代への移行に向けて、若い世代が如何様にホルタ、アルカティリと選挙後の取引をするのかが注目すべき点であろう。
(5)しかし結局は、CNRTが連立政権をつくり政治の主導権を握るという予想が有力である。

2.旭英昭・東京大学大学院教授(前在東ティモール大使。第1回投票の際の監視団の団長。)

(1)(民間、NGO関係者等を含む)今回のハイブリッドの選挙監視団の派遣は、国内での関心を高め、現地での活動をパワーアップした点を高く評価すべき。
(2)団長としての役割は、特にフレテリンを率いるアルカティリ元首相に対して、選挙の公正な実施や結果の受け入れ、また東ティモールへの日本及び国際社会の継続的な関与といった日本からのメッセージを伝えることにあったと認識。
(3)選挙前に安保理議長の声明発出、現地での4カ国大使(日本、EU、米、NZ)のデマルシュ、更に、麻生大臣とグスマン大統領の電話会談等を通して、一連の選挙の自由、公正、平和な実施について国際社会からのメッセージが送られた。その中で、わが国がアルカティリに対して温めてきた手持ちの外交カードを切ることとなった。首相時代に日本に招聘し、公式な接遇をして彼の自尊心を満足させたことで、彼の気持ちの中には日本に対する"一目おいた"ものがあると自分は確信していた。彼との会談では冒頭思い出話から入り、そのことを確認した。その上で、わが国では彼の政治家としての責任ある言動を引き続き注目していると前置きし、自分の方から、民主主義については独立闘争時のそれとは異なり、敗者復活戦のあるゲームであること等を伝えた。彼は、ジッと黙して聞いていたが、その後の彼らの言動から察すると、そのメッセージは確かに伝わったのではないかと思う。
(4)今回のフォーラムは懐石料理に見立てられるように、多様な意見が発出されると確信。

3.小澤俊朗・内閣府国際平和協力本部事務局長(決選投票の際の監視団の団長)

(1)日本の東ティモールに対する今後の支援に関しては、政策志向の議論が必要であると考えており、平和構築フォーラムの本テーマに対する関心に感謝。
(2)PKO事務局は日本からの文民警察官、選挙監視団派遣等で関わっている。自分(局長)が現地で東ティモール要人に会い面談した後の所感としては、東ティモールが政治の転換期であること、若い世代の台頭してきていること、石油収入の積み上がり財政資金の豊かな最貧国であることを言及したい。また、日本における東ティモールのイメージがネガティブで固定化されていることへの危惧も述べたい。
(3)決選投票の際に監視団長として参加した。国連代の三番目の大使として東ティモールをみていたが、また9代目PKO事務局長として、政治のリーダーに日本からのメッセージを伝え、日本の存在を示すことに努めた。また、団員は「善意の傍観者」として各地での選挙監視活動に励んだ。
(4)ル・オロ(フレテリンの大統領候補)は如何なる結果も受け入れる旨表明していたので、暴力沙汰になることは低いと確信していた。日本監視団は、不正の防止、選挙結果が平和裡に受け入れられることを主なメッセージとしたが、決選投票では、第1回選挙時と比較して多くの改善措置を実行していたことが評価できた。UNMITには、東ティモールのオーナーシップを重視することを伝えた。
(5)識字率が5割と低く、技術協力、キャパシティ・ビルディングの必要性は非常に高い。また、治安改革、石油基金13億ドルを活用したインフラ整備をもって雇用創出を図ることが肝要と思われる。日本の円借款を活用する可能性も検討すべきではないか。日本の東ティモールへのかかわりは、99年に文民警察、物資協力、輸送協力、制憲議会・大統領選挙への選挙監視、自衛隊施設部隊の派遣と多様である。今後は、平和構築委員会への東ティモールの取り上げが関係者のなかで協議されている。


第2部 パネルディスカッション「東ティモールにおける平和の定着と国づくりに向けて」

(モデレーター:花田貴裕・外務省総合外交政策局国際平和協力室課長補佐)
第2部では、平和の定着と国づくりについて、これまで第一線で活躍してこられたパネリストの方々に説明いただいた後、会場の皆様を交えて、東ティモールの平和構築に際しての重要課題について考えていきたいと思います。

(長谷川祐弘・法政大学教授)
 国連の観点から、東ティモールの平和構築と日本の取り組みについて、選挙について絞って話したい。 紛争後の段階にある東ティモールではまだ民主主義は脆弱な点もあり、暴力によらず選択が行われるよう、 国際社会は見守るだけでなく、支援していくことが大事である。選挙監視団の団長としてかかるメッセージを現地の指導者に託したことは貴重で、マリ・アルカティリ元首相が日本監視団からそういったメッセージを頂いた、十分判っていると自分に対して述べるところがあった。
 他方で、指導者たちはそう思っていても、権力を決める段階にあって、自分たちがどうしても勝たなければならないという状況に追い込まれるということもある。フレテリンは国民議会選挙を前に法律を改正することにより選挙のルールを変えたが(@投票用紙に党首名を記載しない、A開票は県集計所にて行う、B最大政党が政権を担う)、こうしたルールの変更により、国民の不信感が生じたり、投票の結果が必ずしも公正に行われなかったのではないかという疑いが生じたりする状況になりかねない。かかる状況下、自由、公正な選挙が行われるように国連は様々な措置を採っているが(@投票箱の保護、A投票箱の輸送の際の国連警察官の同行、B開票所における政党代表者の立ち会いを認める、C投票用紙を国外で印刷し、通し番号を付すことによって不正な投票用紙の追加を防ぐ)、自分としては、投票が行われる際には国連職員や国連警察官がその場にいる等の国連の更なる関与が必要ではないかと考えている。
 こうした中で日本が行うべきこととしては、次回の監視団派遣の際には、これまで同様に東ティモールの政治指導者に対してメッセージを送ると同時に、自由かつ公正に選挙が行われるよう国連の関与を強化していくことを促していただきたいと考える。

(阿部智・外務省国際協力局国別開発第一課課長補佐)
 日本政府の経済協力の観点から東ティモールの平和構築への日本の取り組みについて述べたい。まず、平和構築と経済協力の関係であるが、現行ODA大綱( 平成15年8月29日閣議決定)の中で、重点課題の一つとして「平和の構築」が掲げられており、「紛争終結後の平和の定着や国づくりのための支援まで、状況の推移に即して平和構築のために二国間及び多国間援助を継ぎ目なく機動的に行う」という記載がある。また、平成17年 政府開発援助に関する中期政策について閣議報告がなされ、 その中でも具体的に平和構築について言及がある(「…人々は『平和の配当』を実感し、社会の平和と安定につながる。…)。
 こういった原則の下、東ティモールに対しては1999年12月の第1回支援国会合では、3年間で1億3000万ドル、2002年5月の第6回支援国会合では3年間で約6000万ドルの支援表明が行われ、その後着実に実施が行われている。また、現在のところ、@教育・人材育成・制度づくり、Aインフラ整備・維持管理、B農業・農村開発、C平和の定着を対東ティモール支援の重点分野として取り組んでいる。

(佐々木隆宏・JICAアジア第一部次長)
 JICAの平和構築の枠組みは、開発援助を通じて紛争を予防していくこと。これまでも、無償資金協力と技術協力の連携を念頭に、開発事業を展開。一例を挙げれば、東ティモールのマナトト県の灌漑施設を緊急支援無償で改修したが、この灌漑施設を対象に、東ティモールの農産物の自給率の向上のために営農計画の作成と稲作技術の実証をJICAの国際協力専門員が中心となって行っている。その他、自衛隊が残していった建設機材の維持管理を含む道路維持管理能力向上プロジェクトや、NGOと連携しコーヒー栽培支援や啓蒙活動にも取り組んでいる。
 昨年12月に初めて東ティモールを訪問し、現地の専門家やNGOとも会って議論したが、現場では、政府のみならず、コミュニティーレベルでも人材がいないということが課題として指摘されていた。その点では、息の長い人材育成が重要であると思っている。具体的アプローチとしては、コミュニティー・ビルディングと政府の強化を一体としていくことが有効。中央政府と草の根レベルをつなぐ役割をJICAはできる。
 また、将来のリーダーを育成していくためには、留学による時間をかけたトレーニングが必要。この点では、先方教育省は、コスト・シェアも検討できると話していた。
 ASEANは外交官や公務員の人材育成をかなり支援している。JICAもJICA-ASEAN地域協力会議(JARCOM))の枠組みを通し、東ティモールに対しても先進アセアンのリソースと協働し支援できる。マレーシアとのパートナーシップにより、東ティモールの公務員研修所に対する協力を開始するが、言葉が通じるという点でも非常に有効なリソース。
 今回6月末の国民議会選挙に際しては、国際平和協力法の選挙監視団の派遣に現地の所長が参加する予定である。この参加を通じて、新たなネットワークを得て、新たなニーズを検討していきたいと考えている。

(山本理夏・ピースウィンズ・ジャパン海外事業部チーフ)
 最初にピースウィンズの活動紹介をしたい。ピースウィンズと東ティモールとの関わりは、99年の騒乱の直後より現地入りして、緊急人道支援を行ったことが始まりで、その後は、コーヒー農民向けの復興支援に切り替えて、現在まで継続している。東ティモール産のコーヒーをフェアトレードにて販売しているが、このコーヒーはなかなか好評であり、会場にご来席の皆様にも是非お試しいただきたい。昨年の混乱を受けて、再度緊急人道支援も再開させ、コーヒー農園の支援と同時並行で行っている。こういった地方における支援(農業、漁業等)や、治安が悪化した時に緊急人道支援をニーズに応じて行っていくことは、ピースウィンズがきわめてオリジナルというものではなく、日本のNGOであれ、海外のNGOであれ、同じようなことをやっているのではないかと考えている。東ティモールへの支援にあたっては、国連ではUNHCRやUNDP、またJICA、外務省、ジャパン・プラットフォームと組んで行っているところ、政府とNGOの間に一線を画したりするようなことはせず、協力関係で支援を行っていると考えている。先般の大統領選挙第1回投票の際には、ピースウィンズの職員も監視団の一員として政府の選挙監視団に参加し、選挙監視活動を行っている。
 本日のテーマとなっている平和構築については、99年の騒乱以降、東ティモールが国連の支援を受けつつ、独立し、国づくりに取り組んできたが、再び混乱が起こったというのは何故かという点がポイントになっていると考える。この点についてNGOの視点からコメントすれば、山田先生の解説にあったとおり、いくつかの政治グループがあり、その中には武力を持って闘争しているものと、武力を持たないで闘争しているものがあり、また内部分裂しているものもあるというのも事実であると考えるが、実際に現場の視点から見れば、放火したり、石を投げたりしているのは、職がない、仕事がない割と若い者が多いのではないかという印象を持っている。東ティモールでは学校を卒業することも困難であるし、また、卒業後に農業で生計を立てていくことも困難であり、都市に出てきても仕事がすぐ見つかる訳ではない。他方で、国連や各国の支援が大量に入ってきていた時期とも違う状況にもある。そういう若い世代が感じている不満をどうおさめていくのかというのが課題ではないかと考えている。
 紛争をどう終わらせていくのかという点についていえば、やはり海外からの支援だけではなく、実際に現地の住民がもう紛争はこりごりだ、もうこんなことは嫌だということになって、そこで上手に政治が動くとようやく終わるのではないか。そのようなタイミングをしっかり見極めなければならないと考えている。これに加えて、息の長い、しっかりとした東ティモールの支援を継続していくということが必要なのではないか。
 NGOの視点から日本がいかに取り組むべきかについては、まず現場のプライオリティーを見て、日本が何を行っていくべきかという順位づけは現場に求められると思う。それは、東ティモールのような国の規模であれば、国の指導部から出てくるのではなく、市民のほうから出てくるのではないか。国として、東ティモールが各国に何を要請していくのかということをしっかり定めることができる段階にまだないからこそ、現場レベルのニーズを草の根の人々から吸い取って、しっかり支援することが必要であり、また、それを可能にするためのいろいろの枠組みが必要ではないかとも思う。
 次に、このような平和構築の支援においては、NGOも主要なアクターとして活躍できる。最近このことが徐々に認識されつつあるようにも感じている。それは、現場の声を拾いやすいという立場に加えて、国と国との関係を飛び越えて、いろいろなことをできる柔軟性も有しているからであると思うが、一方でNGOだった人が、国連職員となり、あるいは国連職員だった人がJICA職員になる等係わっている人材は結局同じであり、置かれた立場は違っても、NGOとしては立場を超えて、同じような人材でやっていける部分もある。NGOは、国連、JICAや政府の支援と比して、組織力、資金力で大きな違いがあることは現実であるが、それでもアクターとしては公平なパートナーでありたいと考えている。パートナーとして小さいからこそ、大きな組織ではできないこと、また連携してやっていけることもあると考える。また、こういった場に呼んでいただいたこともその一つであると考えており、政策的な協議の場にも、全部でなくともその一部でもよいので、NGOとして貢献していきたいと考える。オールジャパンという見方に立てば、NGOというアクターをかんがえていくのも興味深いのではないかと思う。 
 また、NGOと政府について、一緒にやったほうがよいことの他にも、時には別々に、また対立しながらやったほうがよいという面もあり、NGOとしては政府や国連といつも仲良くやっていくことが求められている訳ではない。政府等と一緒にやらないという時には、より市民の立場に立つ形での支援や連携の仕方を模索できればとも考える。

(脇阪紀行・朝日新聞論説委員)
 東ティモールについて、治安が悪いとか将来性がないとか暗いイメージが再生産されていることについては、メディアに多くの責任があるのではないかとのご指摘があった。自分も、過去バンコクには駐在したことはあったが、東ティモールの専門家ではなく、99年の騒乱以降現地を度々訪問してきたにすぎない。一般的に日本のメディアは、東ティモール情勢をジャカルタからカバーしており、現地不在時には現地のメディア関係者と何らかのコンタクトを築き、自動的に情報を送ってもらい、いざ治安が悪化するという事態になれば、現地に入るという体制になっている。要すれば騒ぎがあれば、これはニュースになるという古今東西変わらぬ心理が働いている。
 99年以来、どういう場合に東ティモールが日本で報道されてきたかと言えば、99年9月の騒乱、放火、暴力であり、また2006年5月の騒乱も典型的な例である。この騒乱については、2005年末から兆候はあったとはいえ、現地入りして日本に映像が伝わってきたのは5月になってからであった。これを直せと言われてもなかなか難しいところもあるが、ここでは、そういうメディアの姿勢とか、現地のメディアにどういう影響を与えているかということを指摘したい。東ティモールでは、欧米諸国や国連機関の支援により、ティモール・ポストという新聞社を含め多くのメディアが出来たが、自分たちが現地入りする際には、現地のメディア関係者や運転手を雇用することとなる。昨年5月の騒乱の際に外国メディアが大勢東ティモールに押し寄せたが、外国スタッフは現地のメディア関係者たちに「一日何ドル払うから一緒に仕事してくれ。」と依頼し、現地のメディア関係者が数日、また1?2週間外国メディアと一緒に働くということとなると、その間の現地メディアの体制は手薄となり、新聞の発行にも影響があるということを聞き、忸怩たる思いをした。
 また、昨年5月の騒乱の際に新聞社の社屋が消失したり、スタッフが一時的に非難したりする事態も生じたが、これではせっかくの民主主義の基盤が崩れるのではないかということで、UNICEFであったと思うが、資金・人をいろいろな手段で支援したこともあって発行が継続されたと聞く。他の紛争地の場合、例えばカンボジアの例に鑑みても、現地メディアの育成も支援の一つの大きな柱となりうると思うが、さきほどの外務省、JICAの話の中ではそういった話はなかったとの印象を受けた。最近の法の支配、ガバナンスの支援の中で、現地メディアの支援も考えていくべきではないだろうか。
 日本のメディアと平和構築という点に関し、メディアの側から見れば、日本から見た、日本に売れるニュースということで商品としてニュースができあがっていく現実がある。日本の自衛隊が東ティモールに行った時、また、最初(99年)に日本の文民警察官が東ティモールに行った際には報道の過熱ぶりは大変であった。当時、文民警察官2名が事務所から出てきた際には多数の報道陣(20人規模のカメラマン)が彼らを取り囲み、日本のお茶の間では、「こんな危険な東ティモールで活動を始めた文民警察官の方々」と伝えられるのだが、それは非常に安全な事務所の前でそういった形でニュースが作られる。現在、文民警察官が東ティモールに行かれているが、 日本のメディアの関心の薄さを反映し、対応といえば非常にクールというか、ジャカルタから誰もカバーしていない。同じ日本の要員派遣といっても、状況によってメディアの対応には格差やギャップも生じている。紛争とメディアは非常に重たい課題で、戦争をあおるような報道をしていいのか、平和をつくるような報道をすべきではないかということが第一にあるが、日本のための報道なのか、東ティモールのための報道なのか、その矛盾や板挟みを日々感じながらやっていくのが現地に派遣された日本の特派員やメディア関係者の宿命ではないかと思う。例えば東ティモールについて明るい報道ということで、ピースウィンズのプロジェクトに行き、現地の人と日本のNGOが大変協力しているということになれば、まさしく平和構築という点では一つの明るい話になるであろうが、他方で別のNGOによるプロジェクトが成功しているのかというとそれはまた別の話で、もしかしたら現地の復興、開発に役立っていないケースもありうるかもしれない。そういうところも頭に置きつつ今後も報道していきたいと考えている。

(モデレーター)以上のパネリストからのお話に対し、山田先生、旭教授及び小澤局長からそれぞれ、ポイントを絞った形でコメント願います。

(山田教授)
 国連、外務省、JICA、NGO、メディアと、それぞれの視点で話を伺いながら、東ティモールだけに限らないが、それぞれのアクターが平和構築に関わる上で必要な話であり、それぞれの話は説得力を持つものであると感じた。東ティモールでは長谷川教授が指摘していた政治の問題もある。また選挙監視団の団長として旭教授、小澤局長が「民主主義というのは選挙に負けることもあるが、それを正当な方法で盛り返していくことが必要である」と政治指導者に伝え、彼らもそれに理解を示した話もあった。しかし他方で、そうした政治指導者たちのコントロールのきかない人々も大勢いる。まさにピースウィンズの山本氏が指摘していた職のない人々や元兵士たちの存在も無視できない状況にある。平和構築の成功事例として歩んできたはずの東ティモールであるが、このような難しい問題を依然として抱えており、やはり息の長い国際社会の支援を継続していくしかないのではないかと思う。

(旭教授)
 本日ここに参加されている方は東ティモール問題や平和構築問題について関心、また見識や経験をお持ちの方ばかりであるが、東ティモール問題に関する日本の関わりというのは、外から見ると皆さんが考えている以上に大きいといえよう。トニー・ブレアが最近のEconomist誌において彼の首相在任10年間を振り返って、外交におけるイギリスの役割について"Be a player, not a spectator"ということを言っているが、まさに東ティモールにおける日本の役割は非常に大きいということを意識されて、そのように力を出してほしい。具体的に云えば、今回のように選挙がテーマになっていれば、政治的なメッセージを伝え続ける、また、国連を中心とする国際社会が関与している選挙の実施に一緒になって積極的に関与することに日本の役割はあると考える。
 経済協力の関係者のほうから、東ティモール支援、また平和構築との関係での開発支援という話があったが、やはり自分も平和構築の出口は開発問題であると考える。ただ、平時に実施する開発問題と違って、平和の問題、安全の問題が最初にあるので、これを先ずどう克服していくかということから入っていかなければならない、それとの調整に時間を要することもある。他方でもう一つ考えていかなければならないのは、こうしたことを考えていく中で、平和構築を考えていく上でも、やはり平時の時の開発スキームをそのままでは使い勝手が悪い。この部分をどうやって弾力的なものにするのか、その工夫が必要である。
 さらにもう一つ言えば、当事者間の協調、調整を上手にやっていくことの必要性を現地に行って感じた。具体的な話で言えば、ASEANとの三角協力は非常に有効だと思う。私が現地に大使として行っていたときにも実施していたが、特に東ティモールの今後の自立、帰属を考えた場合、東南アジアの一角に位置づけ、東南アジア諸国の力をうまく活用していくことについて日本はイニシアティブを採っていけると考える。ASEANの諸国は、結局は自分たちのサブ・リージョンの問題と考えており、日本が率先して支援してくれているのを評価している。山本さんから指摘があったNGOの役割についても非常に大きいと考えるし、大使としてわが国の支援活動の総合調整をする際に常にNGOの役割もその中に意識していた。しかしながら、その際NGOの特性を考えると、手を携えてやるというよりも、お互い距離感を置いてやる方がNGOの本来持ちうる力を発揮しうるというケースは当然ある。
 平和構築におけるメディアの役割に関し、現地で平和構築に携わってみて大きな課題とひとつ感じるのは支援する側の「アテンション・デフィシット(attention deficit)」の問題である。確かに流血の紛争が起こった、平和構築が必要だという時には過剰なぐらいのアテンションがあって、猫も杓子もといった感がある。ところが、平和構築は非常に息の長いプロセスであって、その後にどの支援国でも関心の喪失、アテンション・デフィシットが必ず生じる。これをどのような形でつないでいくかが支援する側に強く求められる点であり、平和構築の成否を左右するひとつの鍵となる。確かにジャーナリズムもビジネスだから、顧客(購読者)がいて、そのニーズに合う形でニュースを作っていかなければビジネスが成り立たないのがこの世界の相場ではある。他方で、平和構築という一つの国際秩序を考えていくために必要なテーマに関しては、公器としてのジャーナリズムの役割、つまり、伝え続けるという、このギャップを埋めるために必要な役割に拘ってもよいのではないか。

(小澤事務局長)
 旭教授がマリ・アルカティリ元首相にどのようにメッセージを伝えるかという話は印象深かった。自分もどのようにメッセージを伝えるかということを考えて、ニカラグアのオルテガを知っているかとアルカティリ元首相に聞いたところ、先方からは20年かかったということであろうとあり、いやいや正確には16年である、サンディニスタとして自信をもって選挙に臨んだところ僅差で敗れ、その後ずっと負け続けたが、昨年ようやく大統領になったという話を紹介した。
 2番目に長谷川教授から、フレテリンが選挙ルールを変えようとしているということについて、実はこれはもう変わっている。大統領を選ぶのではないので、投票用紙に党首の写真ではなく政党のマークを掲載するというのは理が通らないと言われると、まあそうかな、という気がしないでもない。もちろんこれによって一番損をするのはグスマン前大統領が率いるCNRTであることは明らかであるが、法律として仕方ないのではと考える。自分としては 国民議会選挙は、全国一区の拘束名簿式比例代表制で、得票率が3%に満たない政党からは議員が選出されないという選挙制度であることに注目したい。国民議会選挙では、開票は県庁で行われるが、いろんな段階で不正がしやすくなる、その不正を防止するために、国連、現地の関係当局の負担が高まる。日本の監視団も、従来に比べて現地の滞在期間をのばすという対策を講じているところである。選挙であるので、現地のオーナーシップを重視しており、国連が全部やるということではない。警察官の立ち会いについては、25メートル以上離れて立つということがルールとしてあり、むしろそれが守られていることを監視すべきではないかと考える。
 政治の闘争はあるが、現場から見ると放火や投石はやはり職についていない若者たちが行っているとの指摘が山本さんからあり、確かにそのとおりではあると思うが、政治闘争をしている人たちが金を与えるので放火や投石を行うということもある。やはり、フレテリンから離れていった人たちとフレテリンに残っている守旧派の間の権力闘争が今度の選挙で決着がつくのかどうか、非常に重要な局面であると思う。
 脇阪さんが指摘された現地メディア支援について、自分も同感であり、非常に重要なガバナンス支援になると考える。
 今回はビジネスの関係者は参加されていないが、実は日本は間接的に東ティモールから随分輸入をしており、それは東ティモール沖合の石油・天然ガスである。統計上は全部豪州からとなっているが、新たに交渉中のグレーター・サンライズという天然ガス田があり、これには大阪ガスが10%の資本参加をしている。この交渉がまとまり、数年後に開発・生産ということになれば、当然のことながら東ティモールの財政収入も、今現在で13億ドル、それが毎月1億ドルのペースで増加している。これに加えて更に積み上がっていくこととなるという、大変財政資金が豊かな国が出来上がるということを忘れてはならないと考える。

●質疑応答

(会場参加者A)
 自分はUNHCRに所属する前に4年間、NGOやUNDPの職員として東ティモールに赴任し、また、昨年4月に社会が不安定化した際、IDPへの支援を行うために現地に2ヶ月間赴任した。その現場での経験を元に質問というかコメントをしたい。山田教授や山本チーフが述べていたこととだいたい重なるが、自分も平和構築は息の長いものでなくてはならないと感じている。昨年はUNHCRの任務としてディリ県内で約7万人とされるIDPへの支援のために現地に行ったが、自分の任務はIDPの自宅等への帰還のモニタリングで、そのモニタリングを行いながら、なぜ政治的な取引や駆け引きが投石や放火といった市民レベルの犯罪行為につながっていったのかということを考えていた。モニタリングを行う中で放火されてから日が浅い村等を車で、また徒歩で回ったが、焼かれた家の壁に現地の言葉で落書きがされ、そこにいろいろなメッセージが含まれていたことに気づいた。メディアでは東と西の衝突というように言われていたが、自分が見た落書きでは、東の人たちは泥棒だと書かれたものが数多く見られた。何故だろうと考え、 NGO職員として赴任していた2000年の時点の問題を振り返ってみると、放火が行われた区画というのは2000年当時土地の問題がかなり残っていた区画であった。20万人以上とも言われる強制連行、若しくは難民、若しくは東ティモールの住民が一時西ティモールに居住していた時期があったが、これらの住民が東ティモールに戻ってきた時、特に東部出身の人々がディリに滞留し、社会経済活動に従事していた。これらの東部出身の人々は当然、住む場所がないので、一時的にインドネシア政府等が置いていった不動産、建物や家屋に住み始めたが、その中にはインドネシア政府が75年にタダ同然の金額で東ティモールの住民から摂取したものが多くあった。もともとその土地を持っていた人は、99年以降は自分たちがそこに住みたいと考えていたと思うが、西ティモール側から帰ってきた人がそういった場所に住み込んでいた、不法占拠していたという状況があり、こうした利権上の問題というのが、西、東の両者の気持ちの中にも独立後もずっと残っていたと思われた。
 昨年になり東と西、また政治家同士の衝突ということがあった訳だが、こういった過去の問題もつながっており、それまで溜まっていた市民レベルの不満が爆発したと言えると思う。当然これは、山本チーフや他のプレゼンテーターの方々の指摘にもあった青年層の雇用の問題にもつながっていると思う。また、これまで独立してからうまく対応しきれていなかった問題、この場合Transitional Justiceの問題であると思うが、そういった問題も同時に火を噴いたとも感じている。これらの問題というのは、山田教授の指摘にあったように息の長い平和構築支援によって少しでもWork on することができるのではないかと考える。
 最後にメッセージを共有したいが、現地の言葉で書かれている落書きの内容や、現地の人々の気持ちの部分というのは平和構築の部分として取り込んでいくことは重要であると思うので、現地でそういった方々に近いレベルでお仕事をされているNGOの方々、また彼らと国、また国連が密接に協力して平和構築に取り組んでいくということは大変重要なことであると感じている。

(会場参加者B)
 昨年の治安の混乱から今回の一連の選挙に至る期間の間、東ティモールにおける最も重要なニーズの一つとして、同国が効率的な警察力を備えるための適切なトレーニングがあったと思う。しかし、日本のODAの重点分野としてインフラ整備が挙げられているが、治安部門の支援の重要性に鑑み、日本のODAによる支援に関し、同部門の人材育成についてどのように考えているかを聞きたい。

(小澤事務局長)
 治安部門改革は非常に重要である。現在、国連から1600人を越える警察官が東ティモールに展開している、東ティモールにおいて治安維持責任を負っているのは国連であり、その責任者たる警察部門長官はフィリピン出身のトール長官で、日本は文民警察官2名をこのトール警察長官のアドバイザーとして派遣している。自分はトール長官と現地にて会談したが、いかに東ティモール国家警察(PNTL)の再建に時間がかかっているかについて説明を受けた。スクリーニング(注:警察官としての適性等に関する再審査)を受けた警察官が既に800名となっているが、スクリーニングを受けて認証された警察官は先週の時点でようやく数十名で、国連ミッションが現地で再度活動するようになってから8ヶ月経過してまだその段階である。地方に至ってはスクリーニングを経ず、元のPNTLの警察官をそのまま警察官として雇用している場合もある。先週ビケケにおいて非番のPNTLの警察官による発砲事件もあった。
 PNTLは昨年の騒擾の一方の当事者であり、いわばフレテリンの支配の政治の道具でもあった。それが何故顕在化したかというと、軍の中で西側出身の数百名が東側出身者に比べて差別されているということに不満が表明され、これに対して警察が投入されて全体の治安が崩壊したというのが昨年の騒擾であった。これには、すべて政治が背景にあるわけで、この政治を立て直さないとうまくいかないというのが重要な点であると考える。会場のUNHCRの方より指摘があった東と西の問題というのは、実は全部フレテリンの問題と係わっている。フレテリンは5年前の選挙で6割政党 、つまり88議席中55議席を得ることができたが、今度の選挙では国民のフレテリン離れが非常に加速してきた結果、フレテリンは3割政党に落ち込んでしまっている。これはアルカティリ元首相への手法に対する批判が強まっているということであろうと思う。しからば、今度の選挙に向けて必死になって戦うであろうアルカティリ元首相率いるフレテリンが、今度の選挙にあたってどうするであろうかということが非常に注目されるであろうと思う。結論としては、各国とも意識してPNTL再建に向けて取り組んでいる、なおなお時間はかかるのでしょう、こういうことだと思う。

(長谷川教授)
 小澤局長の指摘にあった、PNTLが政治の道具として使われているというのは非常に重要なポイントであって、今後どうしていったらいいのかという点がやっぱりあると思う。それには司法制度を完備する必要がある。3日前にビケケでCNRTが選挙キャンペーンをしていた時に、非番のPNTL警察官が自分の銃器を使ってキャンペーン参加者を殺害したという事件が起きたが、この背景はどうなっているのかということがある。グスマン元大統領は、これにフレテリンが係わっていたのではないかと言っていたが、これに対してアルカティリ元首相はそれは暴言であるとしつつ、同人自身がすぐに真実を解明すべきである、調査されるべきであると言っている。これにはやはり検察官、それから現在は国連の警察のほうだが捜査を行っている。そして、発砲した警察官は自身で自首し、逮捕されて、裁判にかけられることとなっている。その裁判が公正に行われることによって、今後そういう事件が起こる可能性が少なくなると言えるが、いかにして公正な裁判が行われるかということが大事だと思う。そのためには、引き続き外国から来ている検察官、また裁判官が必要であると思う。

(会場参加者C)
 先ほどから日本の援助をいろいろやっているという話があり、政治の問題が出てきたので、経済援助、開発援助からの点から教えていただきたい。一応累積債務とはないという話もあった。そういう前提で今まで無償、技術協力をやってきて、今後は借款も入るということで、こういう状況の中で各国政府や各国のNGOが活動している。今後の経済援助の重点は、費用対効果からいって、どういう方面に重点を置いていく考えであるのか教えていただきたい。

(阿部課長補佐)
 円借款に限らず、ローンの援助というのは返済計画がきちんとなっていないと出来ないので、 どれだけの資金源があって返済能力があるのかということは、間違いなく一つの大きな検討要素としてある。東ティモールは途上国のタイプとして、ユニークな点であると思う。通常、国の発展段階を見ると、だいたい最初は人道支援、あるいは無償資金協力、社会サービス、公的な医療とか水とか最低限のサービス、基礎的なサービスの充足というところから始まって、発展段階に応じて次第に大きなインフラ、あるいは収益率等が上がるようなものについては譲許的な借款を使う。更に発展段階としてはコマーシャルベースの融資を使うというのが伝統的な発展の踏むべきステップだと思う。その中で通常は、当然当事者能力というか、最低限の事務的な能力が、その発展の過程である程度育っているのが大前提であって、円借款あるいはローンの場合にはそれをマネージする最低限の能力と責任を持っている人材が必要である。まさに独立して間もない、社会の中に人材もそういないといった中にあって、今必要なのは、基本的な事務、最低限のマネージメントがきちんとできる価値観がしっかりした人材をまず育てていくことが大事である。それなくして大きなプロジェクトというのは厳しく、ローンの援助についても返済計画等、事務的には相当の能力が必要とされる。通常の無償資金協力についても、国際機関経由という方法もあるが、直接に先方の政府、実施機関に供与し、供与した後は、基本的には彼らのオーナーシップに則って実施していくという点からも、人材育成が一番大事であると思う。

(佐々木次長)
 私も人づくりだと思っている。ご紹介した通り、これまで無償資金協力と一緒になって人材育成を行ってきている。円借款がつくかつかないかはまだわからないが、2008年からの新しいJICAでは円借款もやることになるので、アジアの発展というのはやはり人も金も一緒に動いていくということであったと思う。もし条件が整えば、そういった資金協力と日本がもっている技術協力を組み合わせて、人と金も動かしながら進めていくというのが方針になるのではないかと思う。

(小澤事務局長)
 東ティモールは非常にユニークなケースであると思う。圧倒的にキャパシティ・ビルディングを必要としていながらも、非常に資金があるがゆえに、世銀であれば、ADBであれ、バイのものであれ容易に実現しうる状況にこの一年間でなってしまった。現実に私もラモス・ホルタ大統領と会談した際に、先方は、クウェートからの借款を現在検討していると述べていた。東ティモールが自らの国づくりにどういう借款を利用していくのがよいのかよく考えたらよいのではないかと思う。日本はそういう中にあって、人づくりを待っていればよいということではないのではないかとも思う。

(会場参加者D)
 ルワンダ、東ティモールに学生を送って平和構築を指導してきた経験があるが、ルワンダ、東ティモールで思ったことは、キリスト教会の役割、つまりキリスト教会が具体的なプロジェクトを実施したり、暴力を経験した人たちの和解や調和に貢献している。やっぱり地元の人たちにも信頼があって、尊敬もされているということで、今後の東ティモールの平和構築の文脈において、キリスト教会の役割はどのようなものなのか、様々なアクターが連携しているということであるが、今後どういった連携なり、協力なりがあるのか。具体化しているもの、またアイディアにつきお聞きしたい。

(旭教授)
 東ティモールにおいてMissionaryの役割は大きいし、あの社会においてカトリック教会の占めるその圧倒的な存在感もある。また日本からのMissionary の方、ファーザー、シスターの方々もいる。平和構築の中でどのような形で積極的な役割を果たしていけるのかについてはよく判らない点もあるが、 いろいろなボランティア活動を実施する中で重要な位置を占めているのであろうと思う。他方で、現地で大使を務めていたときに大変ありがたかったことは、東ティモールが独立するまでは日本政府がどちらかというと東ティモールの窮状に対しては、戦略的な考慮から無関心冷淡であった時期に、この関係者の方々が"セカンド・トラック"として現地社会における親日イメージの基盤をつくっていたということは確かだと思う。自分自身、こうした彼らのそれまでの役割には大変感謝しているし、今後も何か役割を担って存在を示し続けるとは思う。

(山田教授)
 カトリック教会は広い土地と独自の学校を持っており、東ティモールでは一つの有力な権力基盤を築いている。NGO関係者や市民社会から話を聞くと、教会があまり強くなってくると問題が生じるという。昨年、アルカティリ政権が倒れた背景には、民主化実現と関係してカトリック教会がかなり背後で動いた事実が指摘されている。このように、カトリック教会も一つの有力な権力アクターであるということを忘れてはならないと思う。

(長谷川教授)
 教会の役割であるが、自分も二人のBishopと話したが、彼らは1年半前にデモを起こし、その際に当時のアルカティリ首相は、政教分離であり教会は政治に関わらないで欲しいと伝えた。学校における宗教の費用も取り上げようとして、これに対して非常に反発して対決するようになったのだが、やはり自分としても教会は政治に距離をおくべきであろうと考える。今回問題になったのは、教会は日曜日に随分政治的な発言をしているということで、フレテリンは法律により教会は発言すべきではないということを言っている。そこにおいて、国民はどうしたらよいのかということになるが、自分は今まで国連が関与してきて、それなりに成功している意義、証というのは、今回の大統領選挙を見た場合、結果から見ると国民は自分なりに、自分が思ったように投票していると言えると思う。そういう意味において教会は個々の人たちがどのような政党に投票するということは言わずに、自分たちで思った政党に投票するのがいいのであろう、とその程度に止めるのがよいと思う。

(モデレーター)
 これまでの議論の総括として、本日言及のあったコメントの要点をかいつまんで述べてみたい。
 先ず最初に、不安定な政治・治安情勢にどう取り組むかという話があった。東ティモールの現状を見ると、政治指導者の権力闘争などが容易に暴力につながりかねない状況にあり、そういった状況下で、民主的な意思決定プロセスや法の支配をどのように定着させていくかということが引き続き大きな課題となろう。この課題を克服していく上で、第一部で説明があった選挙監視は、非常に重要な取り組みであり、先般の大統領選挙については概ね成功との見方が示された。今後、月末には国民議会選挙が予定されており、同選挙に係る選挙法改正の動きもある、こうした状況において、日本から民主主義の定着や社会の安定に向けた的確なメッセージを発していくことが大事であるという話があった。また、民主主義の構築していく上で、カトリック教会も一定の役割を果たしてきた由であるが、加えて、現地のメディアへの支援の視点も忘れてはならないとの指摘がなされた。更に、治安の観点からは、これも昨年4月以来問題となってきたことであるが、権力闘争の政争の具となってしまわないよう、警察をはじめとする治安部門改革や司法制度の改革が重要であるとの話があった。
 次に、平和構築の出口としての開発の重要性も指摘された。これまで日本は、無償資金協力や技術協力を組み合わせながら援助を行ってきたが、ごく最近になって東ティモール自身が13億ドルともいわれる巨額の石油基金を保有するに至ったことを踏まえつつ、今後如何なる援助が最も的確であるのか検討すべきとの指摘がなされた。仮に借款を検討する際には、現地がこれをどれだけマネージメントできるのか、オーナーシップがどこまであるのかということも慎重に見極めていく必要があろうとの話もあった。また度々言及があった石油・天然ガス資源については、世界的にエネルギー問題への関心が高まりつつある中、日本企業も東ティモール沖合のガス田(バユ・ウンダン、グレーター・サンライズ)に対し投資を行っており、この地域のエネルギー資源は、我が国にとっても関係が深いことも指摘された。
 更に、東ティモールを考えるにあたっては、言語政策に如実に現れているような歴史的なポルトガルの影響、また豪州やインドネシア等との地政学的な影響に加え、将来を考えていくにあたりASEANとの三角協力というのも重要な視点であろうとの指摘もあった。
 最後に、最も大事なこととして、平和構築は何にもまして息の長い取り組みであり、それ故、一過性のものではなく、現地のオーナーシップを高めつつ、良きパートナーとして、日本が息長く支援を実施していくことが大事である。その際にはメディアを含め日本全体として東ティモールへの関心を維持していく必要があるとの指摘があった。
 以上述べた以外にも様々な御指摘を頂いたが、東ティモールという国は非常に豊かで多様な表情を見せる国であると改めて認識すると共に、本日各分野の第一線で活躍されている方々から経験に基づいた大変示唆に富んだお話を伺うことができたと思う。
 パネリストの方々に心からの感謝を申し上げ、本件セミナーを閉幕致したい。

(以上)