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第7回平和構築フォーラム・セミナー議事録

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第7回平和構築フォーラム・セミナー
「OECD開発援助委員会における平和構築への取り組み」
2006年11月16日(木)
於:国際協力銀行(JBIC)本店講堂

【発表者】
福田幸正(JBIC開発金融研究所主任研究員)
工藤正樹(JBIC開発金融研究所専門調査員)
小向絵理(JICA社会開発部社会制度・平和構築チーム)
稲田十一(専修大学経済学部教授)(コメンテーター)

【議論のポイント】
●OECD開発援助委員会(DAC)の目的は、@対途上国支援の量的拡大とその効率化、A加盟国の援助の質と量についての定期的な相互検討、B援助の拡充を共通の援助努力によって確保することである。DACの下部機構のうち平和構築支援と特に関係が深いのは、「紛争、平和と開発協力に関するネットワーク(CPDC)」および「脆弱国家グループ(FSG)」である。
●CPDCは、紛争予防と平和構築に関した作業を担当しており、これまで紛争と開発に関するガイドラインやマニュアルの作成で主導的な役割を果たしてきた。CPDCの活動は紛争前・中・後を視野に入れており、基本的に紛争後(post-conflict)に力点を置いている国連の平和構築支援とは活動範囲が若干異なる。CPDCでは、これまでの概念的な議論から、より実務的な活動へと焦点が移行しつつある。
●CPDCでは、紛争予防・平和構築プログラムの評価についても議論している。平和構築支援の場合、通常の開発援助における評価とは別の考え方が必要となる。また、DACの評価ガイダンスでも明記されているように、平和構築支援を評価する場合には、「結果」だけでなく「プロセス」にも着目する必要がある。即ち、急速に状況が変化し得る紛争経験国の場合、支援事業を実施中の段階であっても状況に応じて柔軟にプログラム内容を変更しなければならない場合がある。
●CPDCとGOVNET(ガバナンス・ネットワーク)から派生したFSGでは、現在、脆弱国家支援に取り組む際の原則(脆弱国家取組原則)策定の最終段階にある。この端緒は、2005年1月にロンドンで開催された「脆弱国家に関するDACシニア・レベル・フォーラム」において同原則の策定が提案されたことにある。
●DACでは様々な政策文書が策定されているが、これら出来上がったものの遵守もさることながら、より重要なことは、そうした政策文書の策定プロセスに積極的に参画することである。例えば、現在「脆弱国家取組原則」は策定プロセスの最終段階にあり、日本としても積極的にこれに関与し、日本の考え方や経験を発信していくことが重要である。
●DACでは政治・治安・開発の関係が強調されてきており、日本としてもこれを推進するに当たり、分野横断的な連携強化を検討する必要がある。
●DACでは政策と実施の両課題が議論されるので、参加者にはある程度裁量を認め、実質的な貢献を旨とすべきである。


1.OECD開発援助委員会(DAC)、紛争、平和と開発協力に関するネットワーク(CPDC)、脆弱国家グループ(FSG)(福田JBIC開発金融研究所主任研究員・工藤JBIC開発金融研究所専門調査員)

(1)10月中旬に、経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)で平和構築関連の会合が開催され、OECD日本政府代表部、JBIC、JICAのチームが参加した。その報告を兼ねて、国際場裏での平和構築を巡る議論を紹介したい。

(2)「経済協力開発機構(OECD)」は、マーシャルプランの受け入れ側であった欧州諸国の援助受け入れ調整のために設立された欧州経済協力機構が改組され、1961年に発足した国際機関(加盟国:30カ国)である。OECDの目的は、「世界的規模に立って国際経済全般について協議すること」とされている。

(3)OECDの中で特に開発援助を扱う「開発援助委員会(DAC)」は、1960年に米の提唱で設立された開発援助グループ(DAG)がその前身である。1961年にOECDが発足したことに伴い、その中の委員会のひとつとしてDACに改称された。日本はDAG発足直後に招請され、OECD加盟に先立ち、DAGに加盟した。
DACの目的は次の3点である。
・対途上国援助の量的拡大とその効率化を図る。
・加盟国の援助の量と質について定期的に相互検討を行う。
・贈与ないし有利な条件での借款の形態による援助の拡充を共通の援助努力によって確保する。

(4)DACにはいくつかの下部機構があり、今回はそのうち「紛争、平和と開発協力に関するネットワーク(CPDC)」および「脆弱国家グループ(FSG)」での議論について紹介したい。その経緯を概説すると、CPDCは、1990年代からDACドナーが紛争経験国での援助に積極的に関与し始めたことを受けて、紛争と開発についての議論を行うために1995年にタスクフォースが設置され、その後、現在のCPDCに改組された。FSGは、CPDCとガバナンス・ネットワーク(GOVNET)が協力して「困難なパートナーに関する会合(LAP)」を2002年に設置し、それがその後FSGと改称されたものである。

(5)CPDCの活動について、その成果物の紹介を交えて概説する。CPDCは紛争予防と平和構築に関する作業を担当しており、これまで紛争と開発に関するガイドラインやマニュアルの作成で主導的な役割を果たしてきた。CPDCの活動は、紛争後だけでなく、紛争前・中をも視野に入れており、基本的に紛争後(post-conflict)に力点を置いている国連の平和構築支援とは活動範囲が若干異なる。

(6)CPDCの成果物として、紛争と開発に関しては、1997年と2001年にガイドラインを作成しており、2006年には紛争予防と平和構築に関係する15のトピックを簡潔にそれぞれパンフレット形式にまとめた「課題別ブリーフ」を発表している。また、治安システム改革(SSR)については、2005年に開発とSSRの関係などを概念的に整理したガイドラインを作成している。また現在は、より実務的な内容を盛り込んだハンドブックを策定中である。

(7)平和構築についての課題別ブリーフの内容を紹介する。ポイントは、次の2点である。
・平和構築支援では、政治・治安・経済という3要素が相互補完関係にある。
・平和構築支援と通常の開発援助との違いは、前者の場合、紛争配慮アプローチが必要となる点である。

(8)FSGの活動については、脆弱国家支援に取り組む際の原則(「脆弱国家取組原則」)を中心に解説する(FSGの中で策定作業中)。その前に「脆弱国家とは何か」という点を整理しておくと、DACでの概ねのコンセンサスは「貧困削減に向けた政治的コミットメントに欠け、政策企画・実施能力が弱い国」であるが、脆弱国家についての厳密な定義はない。ただし、関連するデータを扱う際には、CPIAリスト(=国別政策・制度アセスメント。被支援国の「政策や制度」の状態を示す世銀の指標。)を便宜的に用いて支援対象国を定めている。

(9)「脆弱国家取組原則」は、2005年にロンドンで行われた「脆弱国家に関するDACシニア・レベル・フォーラム」においてその策定が提案された。今後、若干の修正が見込まれるが、その項目は概ね以下の通り。なお、これらは至極当然のことを言っているように思えるかもしれないが、こうした原則が策定されるのは、その当たり前のことが現実にはできていないことの裏返しとも言える。
@背景の理解からはじめること
A反応から予防に重点を置くこと
B国家建設(state-building)を主要目的として位置づけること
C現地の優先事項乃至はシステムにアラインすること
D政治、治安、開発の関係を認識すること
E援助国内部の関係部署間の整合性を促すこと
F国際アクター間の実践的な調整メカニズムに同意すること
G援助が負の影響を及ぼさないようにすること
H状況に応じ、援助手法を組み合わせ順序だてること
I迅速に行動すること
J関与を継続させること
K援助の見落としを生じないようにすること

(10)上記原則で述べられている内容は、国連のアナン事務総長が国連の内外で主張してきた内容とも符合している。例えば国連平和構築委員会初回会合でのスピーチにおいて、アナン事務総長は、「途上国側のオーナーシップ」、「国家建設(state building)の要としての「公的制度(public institutions)の構築」、また、それを通した「国家と国民の間の信頼関係の構築」などの重要性を強調している。また、「政治」「治安」「開発」の相関関係を捉えることの重要性は、アフガニスタン復興に尽力された駒野元大使がその著書の中で明解に解説している。いずれにしても、こうした原則は突き詰めれば極めて単純明快なものであり、また本来そうあるべきであろう。今回のDAC会合には、"Do no harm"で有名なMary Andersonも出席し、今回は"Keep it simple"と強調していたことが印象的であった。昨今平和構築への取り組み方が必要以上に複雑になりがちであることへの警鐘として、関係者はこれを真摯に受け止め、肝に銘じるべきであろう。

(11)"Do no harm"、"Keep it simple"、に加えるとすれば"Get things done"を挙げたい。即ち、高邁な議論に拘泥することなく、実現可能なところから途上国側と共に着実に手を着けていくというプラクティカルなマインドが殊に紛争経験国支援では求められる。このような国には、当初圧倒的な"能力"を持った外国人専門家が大挙して入り込み、彼らの身内では高度な議論が交わされるのが常であろうが、それに付き合わされる病み上がりの途上国側にとってはさぞ迷惑なことだろう。なお、このような平和構築の専門家と称する者の多くが現場では使い物にならないことは、途上国側が一番よく知っている。真の評価者は紛争経験国の国民自身である。ついでに標語をもう一点。
"Fragile,Treat with Care!"(割れ物 取扱注意!)。

(12)「脆弱国家」の「国づくりの技(art of state-building)」を会得できれば、現在の途上国問題のかなりの部分に「解」が出るはずである。「脆弱国家」問題への関心の高まりも、この様なニーズの高まりの表れと考えられ、取り組む意義は大きい。


2.紛争、平和と開発協力ネットワーク(CPDC)、脆弱国家グループ(FSG)の活動とJICAの取り組み(JICA社会開発部社会制度・平和構築支援チーム 小向)

(1)本日はCPDCとFSGの議論を簡単に説明し、それぞれに対するJICAの取り組みを紹介したい。冷戦終結後、紛争と開発の議論は、1992年に国連事務総長の報告書『平和への課題』等を皮切りに、それまでは軍事・政治的枠組みで対処されてきた紛争の問題に、開発援助が貢献する方策について言及されるようになった。また、支援の内容も、緊急支援だけでなく、中長期の復興開発支援もクローズアップされるようになった。これら「紛争と開発」の議論が、マルチ(多国間ドナー)や、単独のバイ(二国間ドナー)の機関ではなく、バイの機関が集まって、開発援助の視点から議論されるようになったという点で、DACがCPDCを立ち上げた意義は高い。

(2)1995年に紛争、平和と開発協力に関するタスクフォースが設置され、1997年にはガイドラインを作成した。2000年12月にタスクフォースは当初の目的を達成したとして解散したが、引き続きDAC下部機構のネットワークとして2001年にCPDCが発足し現在に至っている。なお、JICAは1999年5月よりタスクフォース会合(年2回開催)に継続的に参加してきた。

(3)本年10月にCPDC第10回会合が開催され、2007年−2008年の活動計画として次の議題が提案された。
・暴力、治安と開発
・紛争予防・平和構築活動の評価
・早期警戒、予防行動、集団的対応
・紛争予防・平和構築・SSRにかかる普及・研修活動
・他のグループとの連携強化
全体の流れとしては、これまでの概念的な議論を踏まえて現在はそれらを如何に実務と結びつけていくかが議論の焦点となっており、CPDCの活動はそうした方向に収斂しつつある。

(4)CPDCとJICAの関係を紹介する。JICAとしては、DACに参加することで主要ドナーの関心や全体の潮流を知ることができ、また他機関とネットワークを構築することができるという利点がある。さらに、ガイドラインなどの成果物をJICAの政策文書・研修教材に活用してきた。他方で、JICAは自らが開発した分析ツールをDACに紹介し、また先ほど紹介のあった課題別ブリーフの元原稿になっているtip sheet作成にも参画している。さらに、アジアの地域協議等、ワークショップにも参加する等人的貢献も行ってきた。

(5)CPDCでの議題のうちJICAの関心事項のひとつは、紛争予防・平和構築プログラムの評価である。これはJICAの中でも実務的な課題のひとつとなっている。というのも、平和構築支援は通常の開発援助における評価とは別の考え方が必要となるからである。例えば、そうした援助実施上のリスク要因として例えば以下が挙げられる。
・支援が政治性を帯びやすい
・治安が不安定で援助実施に障害
・現地の人材が払底
JICAにおける問題意識は、これから策定されていくDACの「紛争予防・平和構築活動の評価にかかるガイダンス(案)」(今般開催されたFSG第7回会合で概要が紹介された)で指摘されている点と共通している部分がある。例えば、平和構築支援を評価する場合には、「結果」だけでなく「プロセス」にも着目する必要があるという点や、支援が何らかの悪影響を及ぼしている場合、支援事業を実施中の段階であってもすぐにプログラムを変更する必要がある点等が挙げられる(詳細は発表PPTを参照)。

(6)次に、FSGに関して経緯を概説する。2001年の「同時多発テロ」事件を契機に、脆弱国家やガバナンスの弱い国への支援に関する議論の必要性が認識された。2002年、「脆弱国家への援助に関する共通認識を構築し、ドナーの効果的な対応を促進」するため、CPDCとGOVNETが連携してLAPを設置した。その後、2005年6月に現在のFSGに改名された。なお、JICAは2002年よりLAP・FSGに参加している。当初は議論の方向性、実質的意義等、よく分からなかったが、脆弱国家の問題はいまや国際社会の中で主要な課題のひとつとなっている。DACが実施している幅広い課題にかかる40余りの活動に関して、本年メンバー国が投票を行った結果、「脆弱国家取組原則」にかかる活動はトッププライオリティーであった。

(7)本年10月の会合ではCPDCとFSGの合同会合が開催され、国連の平和構築委員会とビデオ会議を行った。DACは平和構築委員会と今後協力していくこと、また早ければ今年中に実務レベルで協議をしていくことなどを話し合った。

(8)JICAは、「国のリスク対応能力を踏まえた中期的支援のあり方」という調査研究を行っており、これまでの研究成果とDAC・FSGの議論を関連付けて紹介する。第一に、脆弱国家支援では援助の恣意性が問題となる。これは、FSGにおける「脆弱国家への資源配分」等での議論と関連している。また、時系列で対応可能な課題を(シークエンスを考慮しつつ)抽出したいと考えている。そうした課題としては次のようなものがある。
・政治プロセス決定・暫定政権樹立協議
・治安回復への直接的支援
・国家機能が構築されるまでの課題への対処支援
・国家機能枠組み構築支援
・「PRSPベース支援」/「援助効果向上」・体制支援の実施
この点は、FSGの「脆弱国家に対する全政府アプローチ」等での議論と関連している。また、脆弱国家については、現状・リスクを把握するために、状況の変容にあわせたニーズの分析も必要になるであろう。人道緊急援助から中長期的開発への適切な移行、援助効果向上等の課題は、FSGにおける「脆弱国家における国家建設」、「脆弱国家におけるサービス提供」でまさに議論されている点である。


3.コメント(稲田専修大学経済学部教授)

(1)DACのCPDCやFSGでの議論では、国連や世銀、二国間ドナーは、どの程度の影響力をもっているのか。また、これらの主要ドナーは、どのようなスタンスや目的をもってDACの議論に参画しているのか。
DACの役割を考えてみると、@(開発援助に関する)議論の方向性を作る、A共同作業を通じてDACドナー間の援助協調を促進する、B情報の共有・情報収集の場、という3つが挙げられよう。それに対して主要ドナーは、それぞれの思惑で参加していると考えられる。例えば(英国の)DFIDは、開発援助に関する議論の方向性や流れを作るために参画している面が強いと思う。また、米国は、議論が自国の利益にかなうテーマには積極的に関与しているという印象がある。世銀は、DACの場を通じて開発と平和・安全保障や政治分野との連携を強めようとしているようである。

(2)日本はDACでの議論にどのようなスタンスで関わってきたのか。日本がDACでの議論に参加する意味は何か。
日本は、上記のDACの役割のうち、主としてBの面に限定的に関与してきたように見える。また、DACのFSGでは、「脆弱国家取組原則」の第5番目に掲げられているように、政治・治安・開発の関係(political-security-development nexus)が重視されているが、日本の組織体制では、とりわけDACの場でのこの分野横断的な連携が弱いように見受けられる。


4.意見交換

(1)新興ドナーの問題
DACにとっての今後の課題の一つとして、新興ドナーの問題を取り上げたい。例えば、中国は昨今スーダンで支援活動を活発化させており、それは必ずしもDACの原則に従ったものではない。こうした国々にどのように働きかけていけばよいのか。

→(JICA小向)中国を含めた新興ドナーの問題については、例えば脆弱国家への援助配分の問題とも関係するので、DACのFSGにおいても、DACメンバー以外のアクターの関与についてどう扱っていくか、議論されている。

→(JBIC福田)新興ドナーについては、JBICでも基礎調査から始めたところである。私見ではあるが、脅威としてではなく、新たなパートナーとして取り込んでいくとのスタンスが重要であろう。なお、新興ドナーをあらたな選択肢として位置づけるか否かの判断は、最終的には途上国側にある。

(2)DACとドナー国の思惑
各ドナーはDACにどのような思惑で参加しているのかという点に関しては、オランダと英国は、開発・外交・防衛をまとめて管轄する部署があるので、こうしたやり方をDACの議論の中で主流化していきたいという意向があったと思う。また、オーストラリアとニュージーランドについては、通常はDACに積極参加しているわけではないが、脆弱国家に関しては積極的である。これは、両国の周辺には脆弱国家に該当する国が多いためである。なお、DACでは最初に概念の議論から入ることが多いのに対して、日本は実践が先行することが多いため、最初のうちは議論に入り込みにくい面もあると思う。

→(JBIC福田)DACに対する各国の思惑について感想を述べるとすれば、殊に平和構築分野では、各ドナーとも現場では苦労を重ねており、苦労を共にするといった実地体験も踏まえて、考え方の平準化が起こっているものと思われる。そのような背景もあってか、今回のDAC会合では大きな意見の食い違いは感じられなかった。

(3)脆弱国家の基準の設定
脆弱国家の基準の設定については、主観的な要素が関係するため難しい面がある。例えば、ガバナンスをその基準のひとつにした場合、何をもって「ガバナンスが弱い」と認定するのか。また同様に、何をもって「国家」とするのかも難しい問題である。例えば旧ユーゴスラビアの場合、ひとつの「国」の中でもガバナンスや脆弱性については地域差が大きいにもかかわらず、それらをひとくくりに「脆弱国家」と認定することが果たして適切なのか。

→(JBIC福田)脆弱国家の基準については、現時点ではDACではあくまでも便宜的にCPIAを使用し、その概ね下方2/5の国々を対象範囲に入れている。CPIA以外にも国の能力を測るための様々な試みがなされているが、最近、途上国側からも「主権国家インデックス(sovereignty index)」などといったアイデアが提案されていることは注目に値する。平和構築の分野でもドナー側の議論で決定的に欠けているのが、こうした途上国からの視点である。なお、脆弱国家の議論はともすれば特に困難な状況の途上国に限定した議論のように受けとめられがちであるが、「国づくり」という途上国問題の根源にかかわる課題を提示しており、そうした観点から捉えるべきであろう。

(4)DACの議論への参画
以前DAC会合に参加した経験から言うと、DACでは積極的に発言を行い議論に参加することに意味がある。したがって、具体的な開発援助を通じて得られた知見や経験を自由闊達に議論していくことが重要である。

→(稲田教授)DACは基本的に開発課題を扱う場であるが、CPDCやFSGでの議論では、開発を紛争・安全保障や政治プロセスとの関連をも重視しながら捉えようとしており、こうした議論に参画していくには、日本国内での組織間の連携も強化する必要があろう。また、コメントをいただいた通り、DACでは政策論と(援助実施の)方法論の双方について議論されており、参加者に援助実施上の課題だけでなく政策的な課題についても自由に議論をすることを許容することで、DACでの議論により深く参画できるのではないだろうか。

→(JICA小向)JICAは1999年からDACの会合に継続的に参加し、JICAの事例紹介を行う等、インプットを行ってきた。日本代表の一員として出席するという側面もあるが、JICAは実施機関なので、DACで得た知見を、どのように実際のオペレーションに生かせるかという点がJICAとしては重要である。

→(JBIC福田)DACや現地ドナー・コミュニティーにより策定された政策文書をドナーとして遵守することもさることながら、それらの策定プロセスに参画することがより重要である。今回のDAC会合は「脆弱国家取組原則」策定の最終段階であったからこそ、JBICは予め政府(外務省)、JICAとともに対応を練り、日本チームの一員としてDAC会合に臨んだものである。なお、日本の主張は概ね反映される見通しである。

(5)今後のフォローアップ
今回はDAC会合参加者から最新の議論を紹介してもらうと同時に、関連する研究成果も披露していただいたが、こうした情報や問題提起は多くの人と共有していくことが重要と考える。また、次回のDAC会合では、本フォーラムでの議論も反映いただきたい。

(以上)