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第6回平和構築フォーラム・セミナー(世界銀行と共催)議事録

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第6回平和構築フォーラム・セミナー(世界銀行と共催)
「戦乱下の開発政策−ドキュメンタリー上映・討論会−」
2006年11月9日(木)
於:東京開発ラーニングセンター
(オックスフォード・ワシントンDC・広島・神戸とテレビ接続)

【パネリスト】
ポール・コリエー(オックスフォード大学アフリカ経済研究センター教授)
黒田和秀(世界銀行紛争予防・復興ユニット社会開発上級専門官)
長谷川祐弘(前国連事務総長東ティモール担当特別代表・法政大学教授)
ロバート・ラム(BBC Nations Zeroプロデューサー)

【議論のポイント】
●大規模な組織的暴力を伴う紛争は、経済的要因と非経済的要因が組み合わさって生じる。経済的要因としては、低所得、低成長、一次産品(特に石油、ダイヤモンドなどの天然資源)への依存が挙げられ、非経済的要因としては、山がちの地形、人口分布(多数の若年男性人口)、国の規模が小さいこと、外部の保護者がいないことが挙げられる。
●紛争後の社会で、これまで往々にして取られてきた戦略は、第一に政治改革(急速な民主主義の導入)、第二に政府による軍事力の増強であるが、これは誤った処方箋である。適切かつ効果的な戦略は、経済開発と外部からの平和維持である。紛争後に大規模な援助を行うとともに、経済政策の改革を推進することが大切である。そして、経済改革の効果が発現するまでの方策として、外部からの平和維持軍が長期間とどまり、紛争への後戻りを回避する必要がある。この両者は、相互に補強し合うものである。
●紛争と開発について、以前は紛争があれば世銀は撤収すべきという見方があったが、今では四分の一の世銀加盟国は紛争の影響を受けており、貧困削減に取り組むためには紛争を避けて通ることができない。紛争後の復興支援においては、世銀は他の関係者(バイ機関、NGO、国連等)と連携することが必要である。紛争後の復興支援には新しいツールが必要となり、脆弱国グループ、紛争予防復興ユニット、紛争後基金、紛争に注意した開発援助政策等の取り組みを進めている。
●平和構築支援に際しては、(1)平和構築が長期に亘るプロセスであると理解すること、(2)内戦に伴う多大な社会的損失を予防するため、持続的開発、人間開発、人間の安全保障に根付いた方策を取ること、(3)直接の当事者となる人や団体の動機、目的、利益について十分に理解すること、(4)世銀や国連が全体の利益を追求する立場にあるという点を最大限に活用すること、(5)民主主義の根本の理念が、直接の当事者である政府の指導者と国民によって理解されるよう確保することが重要である。
●社会が公正と正義のもとで運営されることも重要である。各種の支援を通じて、当該国の指導層に、短期的な利益の追求でなく、公正と正義に基づく社会を作ることの重要性を認識させることが大切である。


1.ポール・コリエー・オックスフォード大学アフリカ経済研究センター教授

(1)紛争の要因

最初に、大規模な内戦の原因を考えたい。単に貧困が原因なのか、それとも他の経済的・非経済的要因があるのか。いずれにせよ、内戦の半分は、紛争後うまくいかなかったことで、紛争が再発したものである。政治的な紛争は、ごく普通に存在する普遍的なものである。しかし、大規模な組織的暴力を伴う紛争はそうではない。何が大規模の組織的暴力を生み出すのか。それは、経済的な諸要因と非経済的な諸要因の組み合わせではないかと考えている。

(2)経済的な諸要因の組み合わせ

経済的な諸要因のうち第一は、低所得である。低所得は紛争に結びつきやすい。第二は、低成長である。これは低所得とは概念的に区別される。第三は、一次産品、特に石油、ダイヤモンドなどの天然資源への依存である。この三つの経済的な要因が重なると、あたかもロシア・ルーレットをしているように、脆弱な国となる。

(3)非経済的な諸要因の組み合わせ

これに加えて、非経済的な諸要因の組み合わせがある。第一は、山がちの地形である。例としては、ネパールが挙げられる。反政府軍が、自らを防護し、武力を蓄えることが容易となる。第二は、人口分布である。若年の男性は年老いた女性より反乱グループに参加しやすいため、若年の男性人口が多いと紛争が起こりやすい。第三は、国の規模が小さいことである。「小さいことは美しい」ということばがあるが、紛争に関しては、「小さいことは醜い」ことだ。小さい国は、経済規模が国内治安を維持するほどに大きくないため、治安の維持が困難となる。人口80万人の東ティモールは、分離独立後に不安定となっている。インドネシアが、東ティモール独立に触発されて200の国に独立すると、危険である。第四は、外部の保護者の有無である。東ティモールは豪州、西アフリカの多くの国はフランスがこの役割を果たしている。外部からの治安の保証は効果的である。なお、経済的要因、非経済的要因のほか、エスニシティも挙げられるが、それほど大きな要因とは考えていない。

(4)紛争後の社会の脆弱性

紛争後の社会の状況は独特である。紛争前の社会と比べてはるかに脆弱である。内戦が極めて起こりやすい。70の紛争後の社会を研究したが、そのうち40%で5年以内に紛争が再発している。これは、国際社会にとって大きな失敗である。このうち半分でも改善できれば、大きな成果である。

なぜこのように紛争後の社会は脆弱なのか。その理由は第一に、経済的な基盤が貧弱であり、経済状況が悪化していること。第二に、多くの武器が民間に保有され、武力を公使すること以外に存在意義を示せない団体があり、そのような団体の指導者は平和に暮らすことを知らないからである。彼らは、レトリックでは「平和」という言葉を使っても、実際に行うことは違う。

(5)誤った処方箋−政治改革と軍事力の増強

このような内戦のリスクを引き下げるにはどうすべきか。70の紛争後の社会を見たところ、これまで往々にして取られてきた戦略は、第一に政治改革、そして第二に軍事力の増強である。この組み合わせは、誤った処方箋である。

政治改革とは、急速な民主主義の導入である。美しい憲法と選挙は、紛争後の社会では機能しない。紛争後の社会では、民主主義は非民主主義よりも危険である。民主主義は、それ自体平和をもたらさない。民主主義が平和をもたらせば良いと思うが、統計的に見るとそうではないというのは厳然たる事実である。人々は、証拠により裏付けられていることを信じるのでなく、信じたいことを信じる風潮がある。紛争後の憲法の制定は、危険な結果をもたらしやすい。また、選挙の前にはリスクは下がるが、選挙の後にはリスクが更に上がるため、総体としてリスクは上がってしまう。そして、PKOが退いた後、紛争が再発しやすくなる。コンゴ民主共和国では、先月第2回の選挙が行われた。PKOは、その翌日に撤収する計画であったが、実際にはPKOの強化が必要となっている。現実を見ても、政治改革は、容易で迅速な解決策とはならない。

紛争国の政府は、政治改革が解決策とならないことを理解しているため、軍事力を増強して、紛争の再発にふたをしようとする。しかし、これも非生産的である。反政府軍は、これを抑圧につながる信号と受けとめて抵抗を強め、内戦が再発する危険性は却って高まってしまう。従って、政治も軍事もだめである。

(6)正しい処方箋−経済開発と外部からの平和維持

しかし、適切かつ効果的な戦略は存在する。それは、経済開発と外部からの平和維持である。

経済開発は、大幅に紛争再発のリスクを下げる。紛争後に大規模な援助を行うとともに、それと組み合わせた形での経済政策の改革を行うことが大切である。紛争後の政府は、往々にして経済政策を誤ってしまう。これを改善することが急務である。それを後押しする形で経済援助を継続する。政治ではなく、経済により平和が保たれる。

しかし、経済改革の効果が発現するまでには約10年間を要する。その間は紛争再発のリスクが高いため、この間に機能する方策が必要である。それは、外部からの平和維持軍である。国連はこれを提供できる。それにより、紛争への後戻りを回避できる。大規模な平和維持軍が、すぐに撤収するのではなく、10年間とどまる必要がある。

経済開発と外部からの平和維持は、相互に補強し合うものである。経済成長は治安の確保に依存している。逆に、平和維持には出口戦略が必要であり、経済開発の実現により、初めて平和維持軍が撤退できる。多くの場合、そのような状況に至っていない。現在、平和維持軍はあまりに早い段階で撤収し、経済援助はあまりに早い段階で引き下げられてしまう。

(7)おわりに

私が述べたいことは、以上の通りである。これは、多くの統計的研究に裏付けられており、その研究ペーパーは全てウェブサイトに掲載されている。Paul Collierでgoogleをかければ簡単に見つけられる。
http://users.ox.ac.uk/%7Eeconpco/
来年の春、4冊目の著書となるThe Bottom Billionが出版される予定である。是非ご覧いただきたい。


2.黒田和秀・世界銀行紛争予防・復興ユニット社会開発上級専門官

(1)「紛争と開発」への世銀の関わり

紛争と開発という問題について、以前は紛争「または」開発と捉えられており、紛争があれば世銀は撤収すべきという見方があったが、今はそうではなくなった。四分の一の世銀加盟国は紛争の影響を受けており、貧困削減に取り組むためには、紛争の影響という問題を避けて通ることができない。

そこで、どのように支援をするかが課題となる。この点について取り組みは進展してきた。特に、コリエー教授の研究は、世銀の政策的方向性を導くものとなった。研究、政策、そして実際の支援の実施の三者が結びつくようになった。例えば、アフガニスタンでは、2001年に支援が再開した。未だ状況は流動的だが、世銀が運営する多国信託基金と日本の社会開発基金も活用しつつ、農村人口1900万人のうち1300万人が裨益するプロジェクトを実施中である。

(2)他の関係者との連携

紛争後の復興支援においては、世銀は一つのプレーヤーに過ぎず、他の関係者(ステークホールダー)、例えばバイ機関、NGO、国連などと連携しながら、当事国政府の指揮のもとで活動することが必要である。世銀の役割をどのように考え、他と連携していくかを考える必要がある。

(3)新しいツール

紛争後の復興支援には、新しいツールが必要となる。過去5−6年間、そのようなツールを作ってきた。9.11テロ事件後、世銀部内でタスクフォースを作り、世銀が脆弱国にどのように関与すべきか検討を行った。その提言に基づき、脆弱国グループという部局ができた。ここでは、世銀がどのように脆弱国に関与するかを考える。自分が属する紛争予防復興ユニットもある。他のグラントメカニズム(紛争後基金/Post Conflict fund)もある。更に、紛争に注意した開発援助政策をとっている。また、紛争の起こりやすい国では、紛争分析構想(Conflict Analysis Framework)を行い、結果を世銀の国別開発戦略などに応用している。世銀としては、引き続き研究者とも協力しながら、取り組みを進めていきたい。


3.長谷川祐弘・前国連事務総長東ティモール担当特別代表・法政大学教授

(1)はじめに

コリエー教授の戦乱下の開発政策に関する研究は、紛争の罠を断ち切り、平和構築を実現するための実務にも役立つものである。

最初に五点を指摘したい。第一に、平和構築は長期にわたるプロセスであり、最低5年から10年を要するものである。これは、自分が勤務した東ティモールでも同様である。第二に、内戦には多大な社会的コストがかかる。上手に対処しないと、その国と国民は更に大きなコストを負担することになる。しかし、これは事前に予防できる。持続的開発、人間開発、人間の安全保障に根付いた方策が大切である。第三に、紛争を起こす人たちにとって、このような大きな犠牲は二次的な関心事であるということを念頭に置いて、紛争予防支援を行う必要がある。直接の当事者となる人や団体の動機、目的、利益について、十分に理解する必要がある。第四に、世銀や国連は、一当事者の利益ではなく全体の利益を追求する立場にあるという点を最大限に活用する必要がある。第五に、民主主義の根本の理念が、直接の当事者である政府の指導者と国民によって理解される必要がある。民主主義のもとで、特定の個人の利益を増進するようなルールが定められてしまう可能性があることを、国際社会は常に念頭に置く必要がある。

(2)平和維持軍の必要性

コリエー教授は、大部分の紛争後国について、経済開発を推進するとともに、外部の平和維持軍に依存することが重要と述べたが、これに同意する。

私は2004年に東ティモールの国連事務総長特別代表(SRSG)となった。その時点で、国連安保理は、それまでの国連及び東ティモール政府の努力を踏まえ、軍事・警察要員の大部分を撤収し、自分のもとには少数の軍事監視要員と警察訓練要員だけが残された。このような状況のもとで、東ティモール政府は、自らの国防軍と警察の武器と要員を強化し、SRSGの意見・アドバイスに十分に耳を傾けなくなり、先般の困難な状況が発生した。

(3)平和維持軍の中立性

東ティモールにおける豪州の役割に感謝している。豪州を中心とした国際治安維持部隊が存在しなければ、4〜5月の暴力を抑圧することはできなかった。しかし、理想を言えば、この国際軍は、中立的で動機に疑問の余地のない治安維持要員を主体により構成・指導されることが、より望ましかった。グスマン大統領以下東ティモールの指導者は皆、国連平和維持軍を希望していた。

(4)社会の公正と正義の重要性

グローバル化された現在の社会では、経済開発が紛争予防の重要な役割を果たすことは間違いないが、それ以上に、人々の期待と要求はより高くなる。経済開発のみならず、社会が公正と正義のもとで運営されることを求めるようになる。そして、国家建設と社会開発への参加と恩恵へのアクセスが拒否されると、怒りが生まれる。ドキュメンタリーに登場したヘルツェゴビナのタクシー運転手が和解は不可能と述べていたのは、自分が国の再建に関与できず、平和の恩恵を受けられず、まして自分の能力向上につなげることができなかったからである。逆に、学生は、将来の職業について様々な夢を抱き、国と社会の再建に参加して、医者とか技術者のようなプロフェショナルとなる新たな機会を得られると思っているのである。彼等にとって、和解は可能であり、必要でもある。

紛争と貧困は関連しているが、それに加え、社会の公正と正義も関連している。例えば、誰もが学ぶ権利と機会があるといったことである。私は国連の人道開発調整官としてルワンダに2年近く滞在してポール・カガメ大統領と何度も協議をしたことがあるが、彼はイデオロギーの変革が必要だといった。自国の人々の感じ方(メンタリティ)や思考様式(マインドセット)が変わる必要があると考えたのである。恐怖と不信感は、人々を暴力行動に駆り立てるが、人々は、他の人々に対する恐怖と不信感によって動かされてはならない。これは、アフガニスタン、カンボジア、ソマリア、ルワンダ、東ティモールでも同じである。

経済改革、治安改革、行政改革、司法改革はそれぞれ重要だが、政府の指導層レベルの改革もより一層に不可欠である。各種の支援を通じて、当該国の指導層に、短期的な利益の追求でなく、公正と正義に基づく社会を作ることで、現在の地位にとどまれるようになると認識させることが重要である。

→(コリエー教授)長谷川氏の意見は現場での経験、自分の意見は統計分析に基づくものであるが、我々の意見と結論がほぼ同じであることは、非常に有意義である。統計分析だけは不十分であり、現実との照らし合わせが必要である。他方、現実からの教訓は一般化しすぎる危険性がある。今回、現場の経験からの意見と統計分析から導かれる意見の双方が一致していることは、ある意味で驚きであり、我々の結論により自信を与えるものである。例えば、若者が職業に就けることの重要性について、東ティモールでの経験は裏付けを与えるものである。また、民族自決の限界について、東ティモールでの経験は、小さなエスニック・グループの民族自決が、紛争の危険増大という現実とバランスをとられなければならないことを示している。


4.ロバート・ラムBBC Nations Zeroプロデューサー

先般作成したドキュメンタリーを通じて、21世紀の紛争と貧困の関わりについて国際的な議論が行われた。開発は平和をもたらすのだろうか。15年前、北アイルランドでは紛争があったが、豊かになった今、紛争もなくなった。自分はドキュメンタリーの制作者として、アフガニスタンやコロンビアなどの現場に入り、ヘロイン、コカインなどの問題について描き出した。

コリエー教授の発表について、70の紛争後の社会の中で、エスニック・グループや人種の違いのために、紛争が解決する望みがないような国があるか、伺いたい。例えば、ソマリアについてはどう考えるか。

→(コリエー教授)ソマリアは、アフリカ諸国の中でも、最も人種的な違いが少ない国である。ソマリアは最も人種的に同一であるにも関わらず、最も悲惨な内戦を経験した。私は、人種の構成で紛争が決まるということを信じない。人種的にはるかに分断されていても、平和になれる。アフリカには2000の人種があるが、2000の国家を作ろうとするのか。それは、実現しても安全が確保されるのか。東ティモールのようになってしまう。パプア・ニューギニアには、400の人種があるが、国として成り立っている。


5.参加者との意見交換

(1)本年4月に東ティモールの社会が不安定化し、暴力が発生したが、本年2月にドナー会合が開催された時には、それまでの業績について、世銀も含め、ドナーは前向きに評価すると述べていた。そのような認識の違いはなぜ生まれるのか。

→(コリエー教授)私はオクスフォードにいたので個別の事情に詳しくないが、私が言えるのは、紛争後の状況が本来的に脆弱ということである。同じ火をつけても、日本では何も起きないが、東ティモールではその火が燃え上がる。これは、国の極端な脆弱性や政府の能力不足によるものである。政府がこのような危険性を理解すれば良いが、往々にして尊大な場合が多い。

→(黒田専門官)世銀として、当時東ティモールでどのように対応したかは承知していないが、政治経済分析が一層必要と感じている。世銀は政治に関与しないということになっているが、政治の重要性は理解しており、我々はもっと政治経済分析を行って理解を深めなければならないと考えている。

(2)中東の紛争、特にイラクでは、大量の殺戮が行われたが、どのように分析しているのか。また、外部からの武力の役割や経済開発との関係をどのように考えるのか。

→(コリエー教授)イラクは特別の事例である。内戦というより、国際的侵略から始まったものである。従って、「内戦後」ではなく、「国際的侵略後」の平和の実現が問題となっている。イラクの事例から、誤った教訓を得てはいけない。例えば、ソマリアの事例から、「介入するな」という誤った教訓を引き出さなければ、ルワンダの悲劇は回避できた。イラクの事例から、「外部の武力を使うな」という教訓を得るべきでない。

(3)私はボツワナ人だが、天然資源を扱う多国籍企業の役割についてはどう考えるか。ボツワナとコンゴ民主共和国では、多国籍企業の役割はどのように違うのか。

→(コリエー教授)ボツワナでは天然資源を効果的に活用しているが、コンゴ民主共和国では天然資源は紛争を生み出している。シエラレオネも同様である。両者の違いは何か。一部は多国籍企業が関係している。しかし、最も重要なイニシアティブは、採取産業透明性イニシアティブ(Extractive Industries Transparency Initiative)だ。これを日本は支援すべきだ。また、ボツワナとコンゴ民主共和国・シエラレオネの違いは、多国籍企業だけでなく、市民社会にもある。ボツワナでは、どのように権力を使うかのチェック・アンド・バランスがある。権力に対する制約が大きく、権力が社会全体の利益に使われる。コンゴ民主共和国やシエラレオネではこれがない。権力は略奪に近くなる。民主主義は、選挙のみと理解されてはならない。得た権力をどのように使うかという点が大事である。そして、政府が何を出来るかについての強いチェック・アンド・バランスが必要である。

(4)紛争後の社会における教育とメディアの役割について伺いたい。

→(コリエー教授)経済政策の改革は不可欠であるが、教育とメディアも大事である。社会が十分に情報を与えられ、政府に対するチェック・アンド・バランスを実現するための基盤となる。また、メディアはジェノサイドなどのプロパガンダに使われることもあるが、社会の両極化を防ぐためにも、メディアに対するチェック・アンド・バランスが必要である。

→(黒田専門官)イラクでは、世銀は信託基金を通じて教育プログラムを支援している。紛争後の社会において、教育の優先度は高く、イラクもその例外ではない。成功例は攻撃の標的にされるので秘密裏に行っているが、困難な状況のもと各種の事業が進められている。

(以上)