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第2回平和構築フォーラム・セミナー議事録

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第2回平和構築フォーラム・セミナー
「UNHCRは平和構築に向けて如何に取り組むのか」
2006年7月10日(月)
於:UNハウス(エリザベス・ローズ・ホール)

【発表者・コメンテーター】
ロバート・M・ロビンソン(国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)駐日代表)
玉村美保子(世界食糧計画(WFP)駐日代表)


【議論のポイント】
●現代の紛争の特徴は、和平合意に至った国の約半数が5年以内に再び紛争状態へ逆戻りしてしまうこと。紛争当事国の長期的な平和と安定のため、平和構築委員会の設立は統合戦略の立案・実施に大きな役割を担う。同委員会の取り組み強化のためには、他の機関とのパートナーシップが不可欠。
●紛争下での活動における人道職員の安全の確保は大きな課題。人道機関は、このために軍事組織をはじめ他のあらゆる機関との対話を深めていくことが必要。特に、人道機関と軍事組織の連携には課題が山積している。両者の協力的なプロセスは、中長期的な平和構築に向けて不可欠であり、今後積極的に取り組むべき。
●人道支援から和平・復興プロセスへの移行ギャップの問題について、「人道アジェンダ」と「政治アジェンダ」の効果的な対話により持続的な解決策を見いだすことは大きな課題。しかし、両者の境界が必ずしも明確ではないことに加え、人道機関は「非政治性」に配慮する必要があるため、自らの任務を超える役割を担う際には最大限の注意を払うことが必要。これらの問題を解決するため、人道機関は他の機関の対話を通じて全体像を把握するとともに、自分たちの役割を理解し、効果を最大化することが重要。
●元兵士を支援する際の主要課題は、社会への取り込み(inclusion)である。元兵士の社会に再適応には、トラウマなどの問題もあるが、コミュニティに根ざした活動を通じて、この社会への取り込みを実現していくことが求められる。
●地理的に遠いアフリカの問題に対する日本の一般の人の関心は薄く、全体的に「同情疲れ(Compassion Fatigue)」が見える。世界で起きているあらゆる問題に対し、より多くの人々の共感や関心を得るためには、日本の大衆文化に入り込むことが効果的。例えば、UNHCRは本年7月下旬に難民映画祭を実施する。人々とのつながりを構築し、精力的に何が出来るかを考え、具体的な行動を取ることが重要。


1.UNHCRは平和構築に向けて如何に取り組むのか(ロビンソン駐日代表)(講演全文

(1)UNHCRは、日本の政策の3本柱である平和維持、平和構築、人間の安全保障を重視し、人道支援の現場での日本の活動や、国連人道機関を通じての日本の貢献を大変評価している。6月23日にニューヨークで国連平和構築委員会の第一回会合が開催されたが、日本は組織委員会のメンバーとなっている。平和構築の分野において日本が大きな貢献を期待されていることを認識し、UNHCRは日本とのより緊密な連携のもと活動を継続したい。

(2)国連の創設以来、200以上の紛争が約150ヶ国で発生し、そのうち100以上の紛争が最近15年間に発生している。現在は約30の紛争が継続しているが、その大部分は国内紛争である。さらに残念なことに、紛争を経験した国々の約半数が5年以内に再び紛争状態に逆戻りしてしまう。紛争から抜け出した国々が長期的な平和と安定を獲得できるような取り組みが、現在必要とされている。

(3)国連平和構築委員会は、戦争から平和への移行途上の国々を支援し、再出発のプロセスを主導する重要な役割を担っている。国連総会は同委員会に対して、紛争後の平和構築、復興、制度構築のための統合的戦略(integrated approach)を構築し、国連内外の関係するアクターとの調整を行い、ベストプラクティスを集め、還元することなどを求めている。紛争後の平和構築は、政治、平和維持、復興、人道支援、人権の保障などの異なる分野の一貫した関与が求められる。UNHCRはこの中で難民及び国内避難民(IDP)の帰還、再定住、統合に特に力を注いでいる。また、元兵士をどのように再統合させるかについても大きな課題である。

(4)ここで、平和構築におけるUNHCRの役割について述べたい。UNHCRは、難民と国内避難民の帰還に付随する多くの問題(社会的、法的、経済的差別、復興、法の執行など)に対処している。また、世界中に展開される多くの難民帰還プロジェクトを通して、多くのNGO、国際機関等のパートナーと連携して和解プログラムを進めている。

(5)JICAは、UNHCRにとって大変価値のある素晴らしいパートナーである。2003年の第4回年次協議で、UNHCRとJICAは、2つの枠組みを設定した。ひとつは永続的な解決に向けて持続的開発による貧困削減と平和構築を行うための枠組み、もうひとつは人道支援と開発支援を結びつけるための枠組みである。UNHCRとJICAは、アフガニスタン、チャド、スーダンなどの現場で難民及び帰還民支援を行ってきた。スーダンのジュバでは職業訓練に力を注ぎ、また、カンダハールでは女性のエンパワメントに取り組み、目に見える成果を上げた。UNHCRはJICAとのパートナーシップに感謝している。

(6)紛争地帯における活動において、人道職員の安全を確保することは大きな課題である。UNHCRは、現地事務所の安全管理部門及び東京を基盤とするeセンターによる安全管理のワークショップなどで、JICAの活動を全面的に支援したい。

(7)UNHCRは、難民保護に加え、国内避難民保護について、国連機関や赤十字を含む国際機関との協議の上、新たな責任を担うこととなった。しかし、この新たな任務をこなすためには、ドナーコミュニティの理解が必要である。なぜならば、難民プログラムに使われる資金を国内避難民保護に回すことが必要だからである。

(8)日本には、UNHCRに対して、より多くの資金援助を考慮していただきたい。日本の支援がない限り、新たな課題に取り組むことは難しい。

(9)平和構築及び人道支援活動の分野でのJICAと日本のNGOの貢献を高く評価している。21世紀にUNHCRが任務を果たすため、日本政府をはじめJICAやNGOとの重要なパートナーシップを継続していきたい。

2.コメント(玉村WFP駐日代表)

(1)現在の紛争では、締結された和平合意の約半数が破られる傾向にあり、その結果として再び紛争状態に逆戻りすることが懸念される。1990年代半ば、モザンビークとアンゴラを担当した。前者は成功し国連の平和維持の取り組みの成果を実感したが、後者は大変難しかった。現在、スリランカ、ダルフール、アフガニスタンの状況には前進が見られるが、未だ多くの問題が残っている。また、コンゴ民主共和国やウガンダなどでは紛争が継続しており、今後の動向が懸念される。

(2)次に、パートナーシップの重要性を強調したい。今後の平和構築への包括的なアプローチとして、昨年平和構築委員会が設立されたことは、復興支援や統合的アプローチにとって大きな進展であった。しかし、同委員会の活動に際しては、取り組みを強化する必要がある。特に、平和の定着のためには、諸機関のパートナーシップによる共同作業が不可欠である。例えば、WFPはUNHCRやJICAと協力し、JENはWFPのプロジェクトを支援している。このように、人道支援のコミュニティが一体となり、裨益者のメリットを最大化することが重要である。

(3)WFPは、紛争地域において、平和の定着のために活動を行っている。WFPは直接交渉には加わらないが、国連のプレゼンスは現地の和平プロセスを促進している。まず、WFPは国連機などのロジスティックスを提供している。また、WFPは、紛争後の安全確保のため、社会的インフラ整備を行っている。それらは道路の整備や地雷の除去等であるが、例えば、「フード・フォー・ワーク」計画の取り組みでは、学校や道路建設などの労力に対して食料を配布し、一定の成果を収めた。

(4)WFPの抱える問題として、資金不足があげられる。WFPの任務には、食糧、ロジスティックス等があるが、それらを十分に遂行できるだけの資金の確保は難しい。ドナーコミュニティに対しては、より多くの資金援助を求めたい。繰り返しになるが、UNHCRやWFPなどの国際機関とドナーコミュニティが共同で行動することに意義があることを強調したい。

3.意見交換

(1)数年前にUNHCRに出向した際、UNHCR自身の平和構築戦略を作るよう呼びかけたが実現しなかった。このような戦略は決して万能薬としての機能は持たないが、有益であると考えられる。UNHCRは平和構築戦略を既に構築したか、あるいは、構築する予定はあるか。また、過去から学んだ教訓はなにか。

(ロビンソンUNHCR駐日代表)
UNHCRは人道機関であり、そのアジェンダの中には「非政治性」がある。人道機関は自らの任務を超える役割に関しては、最大限の注意を払う必要があり、政治的な活動からは一定の距離を置かなければならない。しかしながら、人道アジェンダと政治アジェンダの境界線は必ずしも明確ではない。更にいえば、人道アジェンダと政治アジェンダの効果的な対話により持続的解決につなげることは、実際のところ極めて重要である。したがって、まず全体像を把握したうえで、人道機関は自分たちの役割を十分に理解しつつ、最大限の効果を上げるべく取り組むことが我々の戦略である。

過去から学んだ教訓に関しては、紛争後の地域の移行ギャップの問題がある。PKOや他の軍事組織とどのように良い対話を行うかという点を述べたい。PKOや他の軍事組織は、一般に早期に展開し、早期に撤退する。軍が早期に撤退することの問題は、紛争後の安定移行期間に真空状況を生じさせ、結果的に安定の崩壊をもたらすことである。したがって、UNHCRはこれらの問題に対処するため、軍を含めたあらゆる機関と十分に対話する必要がある。
人道機関が軍、特にPKOと協力することは重要であるが、どのように人道アジェンダと政治アジェンダを合致させるかに関しては多くの問題がある。両者の協力的なプロセスにより中長期的な平和構築をより良い方向に進めることが求められている。今後、UNHCRとして、人道機関と軍の協力強化は積極的に取り組むべき課題でもある。

(2)元兵士の武装解除と社会復帰、除隊兵士の支援として、UNHCRが行っていることは何か。UNHCRの比較優位、付加価値は何か。

(ロビンソンUNHCR駐日代表)
以前、猪口男女共同参画担当大臣は、男女共同参画には取り込み(inclusion)が必要であることを述べていたが、除隊兵士の支援の主な目的も取り込みにある。元兵士をどのように社会に再適応させていくかは非常に難しく、トラウマなどの問題もあるが、いかなる活動に関しても、あらゆるグループがコミュニティに根ざした活動を行うことが必要である。我々は、あまり「取り込み」という言葉を用いないが、難民や国内避難民(IDP)、また、社会全体にとって、このアプローチは重要である。
なお、UNHCRは緒方貞子元難民高等弁務官のイニシアチブで、コミュニティに根ざした和解プログラムを実施したが、これは大きな成果をあげたことを指摘したい。

(3)日本は、アフリカから地理的に離れているため、現実に何が起きているかということに対する関心は低い。どのようにすれば、日本の国民の共感や同情を高めていくことができるであろうか。政府はODA大綱を制定し、ODA戦略を提示しているが、ODA増額に対する理解はあまり得られていない。これに関し、日本国民の同意を得るために、幅広い層による働きかけが必要ではないか。

(ロビンソンUNHCR駐日代表)
上記の問題提起に関し、以下の二点を指摘したい。まず、日本には、「同情疲れ(Compassion Fatigue)」の問題があるように思う。実際に問題があってもどのようにすればよいのかわからず、誰か他の人の問題としてとらえてしまうのである。毎年世界のトップ企業の200社が人道支援を行っている。しかし、この中に日本の企業は一社も含まれていなかったことには衝撃を受けた。日本は大変豊かであるし、力を持った国である。ビル・ゲイツは日本円で6兆円以上を寄付している。日本はもう一度企業部門と企業の社会的責任をどう結びつけるか考えて欲しい。
また、UNHCRは日本の大衆文化に入り込むことが重要だと考えている。なぜならば、日本の大衆文化の浸透力は限りなく大きいからである。UNHCRは7月20日から一週間、東京で「難民映画祭」を開催する。これらは入場料が無料であり、スウェーデン、イタリア、ドイツ、フランスの文化センターで開催される。今までに難民に関して大変多くの映画が作られており、是非多くの人に会場に足を運んでいただきたいと考えている。

(玉村WFP駐日代表)
上記の問題と同じ問いを広報担当官の採用面接時に投げかけたことがある。日本から遠いアフリカの問題に対し、どのようにしたら一般の人々の注意を喚起することが出来るであろうか。映画はそのための一つの大きな方法である。リンクやコネクションを作り、より精力的に何が出来るかを考えてみることは大変重要である。
我々は恵まれた環境にいるが、世界には多くの課題が山積している。平和構築に関して、より多くの日本の人々の関心を引きつけるため、以下の2点を指摘したい。一つは、人々とのつながりを構築することであり、もうひとつは、それらを用いて具体的な行動に移すことである。

(以上)

(終了後、懇親会が行われました。)